一人ひとりに合う教材を作る|療育に3Dプリンターを導入して分かったこと
3Dプリンターで作る材料費は、小さいもので5円、大きいセットでも1,200円でした。
2023年から福祉施設でボランティアをしていて、その現場で使う道具を3Dプリンターで作ってきました。作り方を記事にしたものが30本以上。福祉施設4か所には、のべ54点を届けて実際に使ってもらっています。
「うちの事業所でも導入できないか」と聞かれることが増えたので、何が作れて、何が作れないかをお伝えします。
何が作れるのか
実際に現場で使われているものです。


| 分類 | 例 | 材料費 | 印刷時間 |
|---|---|---|---|
| プットイン課題 | ビー玉・ピンポン玉・音が鳴るスパイラル | 30〜540円 | 1時間50分〜20時間30分 |
| ペグ差し課題 | 数字合わせ・色合わせ | 1,000〜1,200円 | 19時間〜24時間 |
| 就労支援の治具 | 野菜の袋詰め・ラベル貼りの補助 | 30〜280円 | 40分〜5時間20分 |
| 視覚支援 | PECSのカード(てつだって、まって) | 5〜50円 | 12分〜40分 |
| 遊びの教材 | コマ・キャップシューター | 30〜500円 | 1時間〜17時間30分 |
1個あたりの材料費は中央値60円、印刷は1時間30分ほどです。47件のうち43件が500円以下でした。

作れないもの
先にこちらから書きます。買ってから気づくと、もったいないので。
- 人が乗る・体重がかかるもの … 強度が足りません
- 口に入る可能性があるもの … 誤飲にも注意が要ります(参考:ビー玉→ピンポン玉にした理由)
- 18cmを超える大きいもの … 入門機では分割して連結する必要があります
- 柔らかい素材の複雑な形 … TPUは扱いが難しくなります
何でも作れるわけではないのですが、「市販品だと少しだけ合わない」を埋めるのは得意だと思います。

かかる費用と時間

| 本体 | 3万円台〜(入門機) |
| 1個あたりの材料費 (3Dプリンターの材料のみ) | 5円〜1,200円(中央値60円・47件の実測。43件が500円以下) |
| 1個あたりの印刷時間 | 中央値1時間30分(46件の実測。最短8分・最長24時間) |
| フィラメント(PLA 1kg) | 約2,000円 プットイン課題なら4個ほど、ペグ差し課題なら1.5個 |
人数分そろえる場面で差が出ます。6人分の教材を市販品でそろえる費用と、1個60円ほど×6個を比べてみてください。
⚠️ ただし時間はかかります。6個作るなら印刷だけで9時間前後。夜のうちに回しておく使い方になります。
設計ができなくても
設計が不安な方は、そこから始めなくても大丈夫です。ネット上には無料で公開されている3Dデータがありますし、当ブログでも配布しています。まずは印刷するだけでも、使える道具は増えていきます。
ただ、現場で本当に効くのは「その子に合わせた1点」です。そこに進むには設計が要ります。事業所で導入するなら、誰がそれを覚えるかも一度考えておくといいかもしれません。
🔴 1つだけ注意があります。Autodesk Fusionの個人用ライセンスは非商用が条件で、「年間売上1,000ドル超」または「商用プロジェクトでの使用」に当たると有償版が必要になります。事業所の業務で使う場合は、事前に確認してください。FreeCADは商用でも無料で使えます。

施設で使うときの注意
- 衛生 … 積層の隙間に汚れが入ります。共用するものは拭き取りやすい形にしています
- 強度 … 落とすと割れることがあります。壊れても作り直せる前提で使っています
- 誤飲 … 小さい部品は、使う相手を選んでいます
- 施設への説明 … 手作りであることを先に伝えています。作り方を渡すと喜ばれます
⚠️ 「これなら安全です」とは言えません。壊れたら作り直すという前提で使っています。
機種の選び方
🔴 いちばん大事なのは「印刷を始めるまでの手間が少ないか」です。レベリング(高さ調整)は今の機種ならほとんど自動なので、そこでは差がつきません。見るべきなのは、電源を入れてからプリント完成までに、何回さわる必要があるかのほうです。
私の1台目は、レベリングを自分でやる必要がありました。使うたびにひと手間あると、だんだん電源を入れなくなります。職員さんが交代で使う施設なら、なおさらだと思います。「今日はうまく出ない」が続くと、置き物になってしまいます。
私が今使っている3台目は調整の必要が少なく、運用ストレスがほとんどありません。
私が実際に使っている Bambu A1 mini はこちら👇組み立てほぼ不要、初心者でもすぐ使えます。(Amazonで約4万円/セール時は約3万円)
私は5年で3台使ってきましたが、療育の道具を作る用途なら入門機でOKです。作るものが手のひらサイズで、造形18cm角に入らずに工夫したのは数件だけでした。
それでも大きいプリントをしたい方には、256×256×256mmのA1という上位モデルもあります👇

まず何から作るか

最初の1個は、職員さんが「これ、あったらいいのに」といったものにすると、使われずに終わる…ということがなくなります。
とはいえ、いきなり設計から始めるのは大変です。
まずは当ブログで公開している作り方から、現場で使えそうなものを選んで作ってみてください。データを配布しているものもあります。
どの記事にも材料費と印刷時間を書いてありますので、どれくらいの手間がかかるのかが、作る前に分かります。

1個作ってみると、「これならうちでも使えるか」の感覚がつかめます。そこから、その子に合わせた1点に進んでいけば十分だと思います。
まとめ
- 作れるのは手のひらサイズの教材・治具。材料費5円〜1,200円・印刷1時間30分が中心
- 作れないものを先に知っておく(体重がかかる/口に入る/18cm超)
- 人数分そろえる場面で費用の差が出る
- 設計が不安なら配布データから。ただしFusionの個人用は非商用が条件
- 機種は大きさより「プリント完成までの手間が少ないか」
- まずは当ブログの作り方から1個作ってみるのが早い
まずは気に入ったものを一つ作ってみるのも良いでしょう!



